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Arthur, R. C,*; Savage, D.*; 笹本 広; 柴田 雅博; 油井 三和
JNC TN8400 2000-005, 61 Pages, 2000/01
本報告書では、長石、層状珪酸塩、沸石、酸化物、輝石、角閃石に対する34種類の水和反応を対象に速度定数、反応次数、活性化エネルギーを含む速度論データを収集・整理した。また、同様に方解石と黄鉄鉱に対する速度論データも収集・整理した。これらのデータは、地球化学コードであるEQ3/6やGWBで用いられている表面反応支配・遷移状態理論に則した速度則に適合する。上述した水和反応の速度論データは、厳密には、平衡状態からかけ離れた非平衡状態における遷移状態速度則に適合するものである。これらのデータは、平衡状態からかけ離れた非平衡状態および平衡状態に近い状態における速度則にも概念的には適合するものであるが、その妥当性は、元文献の実験結果の解析を通じて可能な限り確認されるべきである。鉱物-水反応に関する速度論データの適用性の限界を考慮し、地下水水質形成の地球化学モデルの評価を単純化する上で、可能な場合、部分平衡を仮定することは有効な方法である。部分平衡の仮定が妥当であるかどうか評価するため、部分平衡の空間的、時間的スケールを評価するために用いられる水理および水-岩石反応を結合したモデル化手法について記述した。この様なモデル化手法は、釜石原位置試験場における割れ目中での地下水流れを含む条件に対して適用され、また、酸化性の地表水が結晶質岩における高レベル放射性廃棄物の処分深度にまで達するのに要する時間を評価するためにも用いられた。部分平衡が妥当な仮定であるかどうかといった疑問に対しては、適切なモデル化手法をもとに検討されるべきである。上述したモデル化手法を用いて、釜石サイトでの条件に適用するためには、割れ目充填部は多孔質媒体に近似でき、地下水の流れは単なる移流のみであり、母岩マトリクス方向への拡散は生じないことになる。さらに、平衡状態に達するまでの距離と同じか、それよりも長い距離に渡って、割れ目の鉱物学的特性や物理学的特性が均一でなければならない。もしこの様な条件下において、以下の状態であるならば、釜石サイトにおける地下水水質形成モデルにおいて部分平衡を仮定することが妥当であると推測される。・方解石、濁沸石(その溶解・沈殿挙動が輝沸石に類似すると仮定)、濁沸石、葡萄石、(石英は含まない)・ダルシー流速は比較的小さい(たとえば、約0.1myr-1)・平衡状態に関する不確実性として、飽和指数で+-0.4を誤差 ...
笹本 広; 油井 三和; Randolph C Arthu*
JNC TN8400 99-074, 84 Pages, 1999/12
東濃鉱山における原位置試験は、主に第三紀堆積岩を対象として行われている。新第三紀堆積岩中の地下水の地球化学的調査により、主に以下の点が明らかになった。地下水の起源は、降水である。深部の地下水は、還元性である。第三紀堆積岩下部の地下水は、14C年代測定から、13,000年15,000年程度の年代が推定される比較的古い地下水である。比較的浅部の地下水はCa-Na-HCO3型であるが、より深部になるとNa-HCO3型になるような深度方向での水質タイプの変化が認められる。上記の様な地球化学的特性を示す東濃鉱山の第三紀堆積岩中の地下水に関して、地下水の起源と地下水-岩石反応の進展を考慮した地球化学平衡モデルをもとに、地下水水質のモデル化を試みた。その結果、土壌中での炭酸分圧の値、岩体中での以下の鉱物を平衡と仮定することで地下水のpH、Ehおよび主要イオン(Si, Na, Ca, K, Al, 炭酸および硫酸)濃度について、実測値をほぼ近似することができた。・土壌中での炭酸分圧: logPco2 = -1.0・岩体中での平衡鉱物:玉随(Si濃度)、アルバイト(Na濃度), カオリナイト(Al濃度), 方解石(Caおよび炭酸濃度), 白雲母(K濃度), 黄鉄鉱(硫酸濃度、Eh)しかしながら、東濃サイトの地質情報は、地下水水質形成モデルを構築する上で必ずしも十分であるとは言えない。特に、より詳細な鉱物データ(たとえば、斜長石、粘土鉱物や沸石に関する詳細なデータなど)は、モデルを改良する上で必要である。したがって、モデルの中で考慮する主要な反応については、再検討する必要があるかもしれない。本報告書では、代替モデルの一つとして、室内での岩石-水反応試験結果をもとにイオン交換平衡定数を求め、イオン交換反応を考慮した地下水水質のモデル化も試みた。しかしながら、イオン交換反応を考慮したモデルについては、今後さらに検討を要する。
佐々木 祐二; 平尾 良光*; 森下 祐一*; 斎藤 裕子*; 木村 幹*
地球化学, 23, p.97 - 103, 1989/00
串木野鉱山(鹿児島県)の熱水溶液の移行挙動を明らかにするため、8つのボーリングから得られた石英-方解石試料中の金、銀、希土類元素を中性子放射化分析法で定量した。鉱山に近い串木野地区の金含量は熱源に近い冠岳地区のものより高い。また金-銀比も串木野地区で6~9、冠岳地区では100と相違がみられた。希土類元素存在度パターンはほとんどの試料で原子番号増加とともに減少することに加え、Euの正の異常性を示した。これらの結果は熱水溶液が熱源の冠岳から鉱床のある串木野地区に移行する間徐々に金に富んでいったことなどを暗示するものである。
弥富 洋介; 石橋 正祐紀; 松井 裕哉; 鵜山 雅夫*; 人見 尚*
no journal, ,
地層処分における処分場建設においては、大量のセメント系材料の使用が想定され、周辺岩盤に影響を与える可能性がある。そのため、セメント系材料が岩盤に与える影響の把握とその分析手法を確立することを目的として、瑞浪超深地層研究所内の深度200m予備ステージ及び深度300m研究アクセス坑道におけるグラウト充填割れ目を含む岩石試料を対象に、偏光顕微鏡, XRF, SEM-EDX, CT-XRD分析を実施した。その結果、岩盤側には方解石の薄い層状の領域が確認されるとともに、グラウト材に接する岩盤側の割れ目において、主にCaの偏在が見られた。また、グラウト材すなわち硬化セメントペースト部分は、炭酸カルシウムを主成分とした硬化物であること、CT-XRDが非破壊で三次元的な鉱物分布を把握できる分析手法として有用であること等が確認できた。一方、母岩である花崗岩中には微量にしか存在しないと考えていたCaが湧水にも含まれていることから、グラウト材から供給されたCaの影響を分離して評価することが現時点で難しいことが分かったため、方解石の沈殿がみられる割れ目が選択的な水みちになっているメカニズムを特定した上で、分析試料の採取と分析および地質環境の情報との比較・評価を行うことが、セメントによる岩盤変質のメカニズムの検討における今後の課題と考えられる。
弥富 洋介; 石橋 正祐紀; 松井 裕哉; 鵜山 雅夫*; 人見 尚*
no journal, ,
地層処分における処分場建設においては、大量のセメント系材料の使用が想定され、周辺岩盤に影響を与える可能性がある。そのため、セメント系材料が岩盤に与える影響の把握とその分析手法を確立するために、グラウト材料(普通ポルタランドセメント)の経年変化を把握することを目的として、瑞浪超深地層研究所の深度300m研究アクセス坑道プレグラウチング施工領域から採取した施工後3年経過した試料と6年経過した試料を観察した。その結果、岩盤側にはグラウト材料の影響と考えられるような新たな鉱物の形成や鉱物の溶脱などの変化は認められなかった。一方、グラウト材料においては方解石が認められたが、比較のために作製したセメント供試体の薄片観察結果から、地下水中のHCOとグラウト材料のCaの反応によって方解石が形成されたと考えられる。また、地下水中のpHやCa濃度の変化から、グラウト材料の変化により高透水性となり湧水量増大によるpHの低下や、ポルトランダイト溶脱後のC-S-H溶脱開始によると思われるCa濃度低下が認められた。今後は、広い領域を対象とした鉱物組成の把握や、グラウト材料と岩盤コアを用いた室内通液接触試験により、水質やグラウト材料の変遷メカニズムについて検討を進める。